2025/12/05 14:30
オーティス・レディング、ブッカー・T&ザ・MG's、ウィルソン・ピケットら数多くのアーティストの名録音に参加した伝説的ギタリスト、スティーヴ・クロッパーが、現地時間2025年12月3日に米ナッシュビルで死去した。84歳だった。
クロッパーの死は、息子のスティーヴン・クロッパーがフェイスブックで確認した。「胸が張り裂ける思いですが、素晴らしい父が今朝旅立ったことをお知らせします。父は本当に途方もない人生を送り、皆さんを楽しませる時間のすべてを満喫していました。どうか私たち家族のために慰めの祈りを捧げてください」と彼は投稿した。
1960年代にスタックス・レコード専属のスタジオ・バンドを務めたブッカー・T&ザ・MG'sのギタリストとして、クロッパーはそのサウンドを形作った立役者だった。彼の澄んだ、しばしばミニマルなギター・ワークと繊細なタッチは、レディングの「(Sittin’ On) The Dock of the Bay」、エディ・フロイドの「Knock on Wood」、ピケットの「In the Midnight Hour」、サム&デイヴの「Soul Man」といったR&B/ポップの名曲で存在感を放っている(「Soul Man」でサム・ムーアが即興で叫ぶ“Play It, Steve”はクロッパーの名を永遠に刻んだ)。
1991年に【グラミー賞】を受賞した『ザ・コンプリート・スタックス=ヴォルト・シングルズ』ボックス・セットの再発プロデューサーで、クロッパーとたびたび仕事をしたスティーヴ・グリーンバーグは、「スティーヴ・クロッパーはロックとR&Bの歴史において抜きん出た存在でした。史上最高のエレクトリック・ギタリストの一人として、彼の唯一無二のプレイスタイルは、“Green Onions” から “Dock of the Bay”、ロッド・スチュワート “Tonight’s the Night” に至るまで、多くのヒットに深い個性をもたらした。さらに “In the Midnight Hour”、“Knock on Wood”、そしてもちろん “Dock of the Bay” といった名曲でのソングライティングとプロデュースを加えれば、スティーヴ・クロッパーは1960年代のポピュラー音楽を形作った最重要人物の一人といえます」と語った。
また、グリーンバーグは人種分断の渦中にあった時代にクロッパーとバンドが果たした役割にも触れた。「スティーヴは、ダック・ダン、アル・ジャクソン、ブッカー・T・ジョーンズと共にブッカー・T&ザ・MG'sとして、1960年代初頭の米南部での酷い人種の壁に挑んだ希有な混成グループでした。公民権運動が最も揺れ動く時期の、人種によって分けられていたメンフィスで、スタックス・スタジオに集い、平等と友愛の精神のもとに、アメリカ音楽に不朽の作品群を残したのです」と彼は述べている。
クロッパーは、1992年にブッカー・T&ザ・MG'sの一員として【ロックの殿堂】入りし、2005年には【ソングライターの殿堂】入りも果たした。プロデューサーとしても知られ、2018年の米ニューヨーク・タイムズのインタビューでは、1967年のレディングの飛行機事故死直後、極度の緊張の中で「(Sittin’ On) The Dock of the Bay」の仕上げに臨んだと語っている。「1週間あれば、きっとやり過ぎてしまっていたでしょう」と彼は話した。実際には24時間以内に完成させたという。
同曲は、1969年の【グラミー賞】で<最優秀リズム&ブルース・ソング>を受賞し、クロッパーにとって2つの【グラミー賞】のうちの1つとなった。彼はこれまで9度ノミネートされており、最新では2024年に自身のアルバム『フレンドリータウン』で<最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム>にノミネートされている。「Dock of the Bay」に加え、1995年の【グラミー賞】ではブッカー・T&ザ・MG'sの「Cruisin’」で<最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス>を受賞している。
1979年の映画『ザ・ブルース・ブラザーズ』の登場でクロッパーのキャリアは新たな盛り上がりを見せた。作品内の架空のブルース・デュオ、ジェイク&エルウッド・ブルースをジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが演じたが、クロッパーはベルーシから電話を受けてレコーディングに参加することになった。その際、後に金言となる提案をしたという。2019年にミュージシャンズ・ホール・オブ・フェイム&ミュージアムのインタビューで彼は、「彼らがやろうとしていたことは、そのままでも成功したかもしれませんが、基本的にスローでミディアムのブルースばかりでした。ブルースに悪いところはありませんが、ダンス向きのものがなかったんです」と語っている。
そして、「なのである日のリハーサル終わりに、“ジョン、踊れる曲をやれば?”と言ったんです。"例えば?"と聞かれたので、“サム&デイヴみたいなの”と答えました。(キーボーディストの)ポール・シェイファーを見て“‘Soul Man'覚えてる?”と言うと、みんな大騒ぎして踊り出しました。終わった後、ジョンが振り向いて、“スティーヴ、この曲大好きだけどキーが高すぎる”と言うので、少し下げただけです」と明かした。この再録版は1979年の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で14位を記録し、名曲を新たな世代に広めた。
家族は声明で、「父が奏でた一音一音、書いたすべての曲、影響を与えたすべてのアーティストが、これからも父の精神と芸術性を受け継いでいくでしょう。父の才能によって人生を変えられた無数のミュージシャンやファンも同じ思いです」と述べた。
ソウルズヴィル・ファウンデーション(スタックス・ミュージアム、スタックス・ミュージック・アカデミー、スタックス・チャーター・スクールを包括)のCEO、パット・ミッチェル・ウォーリーは、「スティーヴ・クロッパーがアメリカ音楽にもたらした功績は計り知れませんが、ソウルとR&Bへの貢献はさらに絶大です。ブッカー・T&ザ・MG'sの創設メンバーであり、スタックス・レコードの象徴的サウンドを支えた存在として、彼のソングライティングとギター・ワークはソウル・ミュージックの言語そのものを形作りました。卓越したソングライター、プロデューサー、ミュージシャンとして、クロッパーは世界中の人々に影響を与え続けるタイムレスなヒットを生み出しました。彼の特徴的なスタイルは時代を定義し、現代音楽史における最重要ギタリストの一人として、その名を永遠に刻みました」とコメントしている。
遺族には妻エンジェル・クロッパーと、子どもたちのアンドリア、キャメロン、スティーヴン、アシュリーがいる。
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